読書感想文の選書にもピッタリ!小説・ドキュメンタリー作品からのコミカライズ作品4選

By そふえ, 2022/08/30

8月と言えば夏休み!そして、長期休みの宿題として根強い読書感想文。

今、まさに読書感想文という厄介な宿題に直面している子も、かつては子どもだった人も、読書感想文を「書いてて楽しい!」という思い出より、「慣れないことを強要されて嫌だった」という思い出が多い人も多いかもしれませんね。

でも、読書感想文は本を読むことの楽しさを体験したり、自分が感じたことを自由に書けて、その時感じたことをギュッと詰め込んで、想いを伝えられる絶好のチャンスでもあるんですよ!

最初は自分の心の内をさらけ出しているみたいで恥ずかしいかもしれません。だけど、自分の考えをまとめて発信するという『これからの世の中に必須の体験』を、読書感想文を通して楽しく、ワクワクしながら経験してほしい!

本記事では、学習マンガを集めてマンガ文庫を開設しているママライターそふえがオススメする、小学生も読める作品でコミカライズ版がある作品を紹介します。

 

異常気象・災害 危機的状況から垣間見える人間の本性『塩の街』 

原作:有川ひろ 作画:弓きいろ おすすめ度★★★★☆

「世界とか、救ってみたいと思わない?」。塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。崩壊寸前の東京で暮らす男性と身寄りのない少女。少女が出会う悲しくもその"時"を生きる人達。どうしようもない状況に振り回されながらも塩害前の生活を取り戻すために2人がとった行動とは?

小説も1冊完結で読みやすい量です。突拍子もない設定に圧倒されてゴリゴリのSF作品かと思いきや、しっとりとしたラブストーリーなので、男女問わず読みやすい作品です。

今年の夏は暑くてしんどくて、普段は気にも留めない気候の異常さを感じずにはいられない。そんな時だからこそ、異常気象を題材にした本作品で、何を感じたのか是非考えてみてほしいです。

オススメ度★5つ!と言いたいところですが、マンガが完結していないので★4つです。マンガで弾みをつけて、続きは小説で一気に読んじゃおう!

 

ミステリーの入口『薬屋のひとりごと』

 原作:日向夏 作画:ねこクラゲ オススメ度 ★★★★☆

中世の宮中で下働きをする少女・猫猫(マオマオ)。花街で薬師をやっていた彼女が、帝の御子たちが皆短命であるという噂を聞いてしまったところから、物語は動き始めます。持ち前の好奇心と知識欲に突き動かされ、興味本位でその原因を調べ始める猫猫の運命は――!?

ファンタジー作品なので歴史的な背景や設定はフィクションで、中国の後宮や花街(鬼滅の刃の遊郭のような場所)が舞台です。

謎解きの鍵になる科学的な知識は、実際に現代でも改良されつつ使われている知識が元になっています。少し昔の世界という時代背景と、シンプルなトリックのバランスが絶妙で、難しすぎないところが小学生にも読みやすい作品になっていると思います。

小説もマンガも巻数が多いですが、短編のミステリーが繋がっているので小説を1冊読めば複数の謎解きに出会えます!が、少し漢字が難しめでルビも少なめなので小説で読む場合はオススメ度★4つです!マンガは全てルビアリなので、すらすら読めますよ!

 

いまこそ考えたい第二次世界大戦の裏側『戦争は女の顔をしていない』

原作:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 作画:小梅 けいと おすすめ度 ★★★★★

ソ連では第二次世界大戦で百万人をこえる女性が従軍し、看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦っていました。しかし戦後は世間から白い目で見られ、みずからの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった―。

本作品は、五百人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした、ノーベル文学賞受賞のドキュメンタリー作品です。

第二次世界大戦というかつての日本が経験した同じ戦争を違う国で体験した女性たちの軌跡。ソ連で戦争に参加した女性たちは男性と同じ仕事に従事していました。機関士、飛行士、弾丸の飛び交う地上戦で、砲兵隊としての狙撃手、17歳の少女までが兵士として戦場に出ていました。

戦争に参加した女性たちは、徴兵されたわけではなく、自ら志願し戦場へ赴いたと言うから驚きです。愛国心と教育、そして男女同権を謳う社会主義思想の影響があったとされます。

思想が文化をつくり、人と成す。全く想像もできない異国の地での戦争体験が教えてくれることに、戦争の見方が変わる一冊となっています。奇しくもロシアが起点となり始まった戦争が長期化している今だからこそ、感じることも多いのではないでしょうか。

遠い歴史的な史実ではなく、今まさに起こっている戦争を自分事として考えるきっかけになる作品でもあります。

原作となった書籍はルビが最低限ですが、難しい漢字や言い回しはあまり使用されていないので、小学生でも読みやすいと思います。重いテーマですが是非果敢にチャレンジしてほしい!オススメ度★5つです!

 

何かに囚われる前に。あるがままをニュートラルに受け止める『スヌスムムリクの恋人』

原作:野島伸司 作画:タアモ おすすめ度 ★★★☆☆

野坂望(のさかのぞみ)、通称ノノは、直紀(なおき)、清人(きよと)、哲也(てつや)と幼なじみの仲良し4人組。 みんなノノが大好きで、ノノのことをホントに大切に思っていた。でもノノにはみんなに言えない秘密が…!? ――性同一性障害―― 体は男の子でも女の子の心を持ったノノ。その事実が明らかになった時、4人の関係に変化が訪れた――。

ラブストーリーなのにジェットコースターのようなスピード感を感じられる作品です。ノノの幼なじみの一人・直紀が語る過去と現在が交差する思い出話から少しずつ紐解かれていくノノを中心とした愛の物語。家族愛、友情、自分を確立させる自己愛、、、様々な”愛”に触れながら、物語は必死に幸福になりたいと願う若者たちの心の変化を追いかけます。

ラブストーリーの”好き”以外のLOVEや感情に出会って、どこまでも複雑で繊細な”心”という原動力の可能性を感じてほしい作品です。

知らないことで避けて嫌ってしまう前に――。

ジェンダーや性嗜好についても考えさせられる一冊となっています。

心の成長と作品への理解が比例するような作品なので、読むタイミングによっては全く理解できないかもしれないし、極端な解釈をしてしまうかもしれません。時期をおいて読み返すと全く新しい気づきを与えてくれて、そのことにまた驚き、自分の成長を楽しめるハズ!読む人とタイミングを選ぶ作品なのでオススメ度 ★3つです!

 

ココロの成長のバロメーター、親子で忘れられない読書体験を!

読書感想文は毎年必ずといっていいほど出る夏休みの宿題の一つですよね。毎年やってくる宿題をイヤイヤやる宿題から、楽しくてどんどんやりたくなる宿題に変えるきっかけは、夢中になって読んでしまう読書体験からはじまると思っています。

まずは、続きが読みたくて仕方がなくなるような作品に出会うことが第一歩。そのためには、読書感想文を書く本人が、読みたい本・読み切った本で書くのが一番の近道だと思います。

さらに、同じ作品を一緒に読んで、感想を語り合うことは、心に残る読書体験になるハズ!

夏休みの楽しかった思い出に、読書感想文がランクインしますように!

 

執筆/そふえ